黄帝内径 61.番水熱穴論篇(すいねつけつろん) その1

黄帝内径の素問は81まである。

ところがこの「素問ハンドブック」に65までしか書かれていません。

なぜ、気付かなかったのか・・・・・書くにはきっと難しいものだったのでしょう。

ということで、61番目は長いので二回に分けたいと思います。

水病と熱病に用いられる経穴について書かれています。

 

気穴論にあった水兪と熱兪の解説。

 

ただし、熱に関する病症は各所に述べられているので、熱兪を示しただけで終わっている。

 

水病については、その病理が詳しく述べられています。

 

黄帝⇒【少陰何をもってか腎を主る。腎何をもってか水を主る】

 

岐伯⇒【腎は至陰なり。至陰は水盛んなり。】

 

至陰とは?

陰性が強いというほどの意味。

腎は陰性で下半身にある。

水は低いところに集まる。

腎は身体中の水を調整する作用がある。

 

【肺は陰なり。少陰は冬の脈なり。故にその本は腎にあり、その末は肺にあり、
 皆水を積むなり。】

 

肺は秋で腎は冬。

五行相生関係では、肺と腎は母(姉)と子(腎)の関係。

又は、腎の経絡は腎を通って肺まで行く。

  だから、水に関する本は腎ですが、肺も少し関係している。

どちらが悪くなっても水病になる。

 

腎の陰気が昇り、心の陽気が降りるのが人体の生理。

その時、陽気は膀胱経を通って降りてくる。

気が下におりるから小便が出る。

この陽気は肺気によって動かされている。

又、この陽気は腎の陰気が昇るから降りてくる。

 

このように、五行説や経絡から考えても、肺や腎の生理から考えても、

肺と腎が水病に関係していると分かります。

 

黄帝⇒「腎何をもってか よく水をあつめ病を生ず。】

岐伯⇒「腎は胃の関なり、関門利せず、故に水をあつめてその類に従う】

 

胃は水穀を分離して水を膀胱に送る。

しかし、腎が陰気を昇らし、陽気を下半身におろしておれば、胃もよく働き、
水を膀胱に送れる。

もし腎の陽気が少ないと、上にある胃は冷えてしまう。

鍋の下に火がないと同じで、鍋(胃)の中の水は消火できず下半身に集まろうとする。

腎の陽気不足の状態になると、下痢しやすく、小便もすっきり出す。

食欲もなくなる。

 

別の視点で説明ですると・・・・

 

胃腸虚弱者や、冷飲によって胃を冷やした人は、胃の消化力(陽気)が弱くなり、胃で陽気が不足すると、胃で栄養分がとれずに脾は精気を腎に送れない。

 

胃は脾によって働かされているので、胃の弱りは脾の弱りでもある。

 

脾が弱くなり、精気が送れないから腎も弱くなる。

結果・・・小便が出なくなる。

 

このことから、水に関する病気は次の治療が考えられる。

 

腎虚による水病。

これは肺と腎がもとに虚した場合。

 一般に水肥りの人の多い証。

 熱がりで寒がり。

 汗かき。

 長くたっていられない。

 

本文には【上下(肺と腎)皮膚にあるれる。故に浮腫をなす。】

 

この水病は外(体表面)にたまった水。

 

これを肺気がめぐらないために、肺の支配する皮膚に水が集まる。

 

このようになった元は、腎気がしっかりしていないから。

 

治療は、肺経の尺沢穴と腎経の陰谷穴を補う。

腎がひきしまれば小便は出てやせてくる。

 

本文には無いが、脾胃が虚したために水病になることがある。

腎炎、ネフローゼの類。

 

これは脾胃を主に補う。

同時に肺を補い気をめぐらす。

胃を補って陽気が多くなれば腎の陽気も多くなる。

脾を補えば腎に多くの精気が送られ、腎も正常に働きだす。


人間の身体のシステムって凄いね(笑)