タオの第64章 「終わり」もまた「始め」にように

小さいうちにやれば難しくない、

 と言ったが、例えば、

 静かにしているものなら、

 掴まえやすいし、

 まだ、固まっていないものなら、

 こねあげやすい。

 

同じように・・・・・

 

薄いうちになら破りやすいし

 うんと細かなものなら、

 吹きとばせるのさ。

 

政治でもね、

 まだ、動きださぬものなら抑えこめるし

 乱れる前なら、鎮めやすい。

 

だいたい、

 ふた抱えも三抱えもある巨木だって

 はじめは細っこい苗だったんだ、
 九階、九十階のビルだって、はじめは

 低い土台からだ。

 

千キロ、二千キロの旅だって、

 まずは足もとの一歩からはじまる。

 

先ばかり見てやろうとする者は、

 失敗する。

 

先のものをいま取りたがる者は、

 取り損なう。

 

だからタオにつながる人は、

 いまのことを、小さなうちにやり、

 あとはそのものの成長に任す。

 

だから・・・・・

 

失敗しないのさ。

 

先取りしようとあれこれ欲をださないから

 失うことがないのさ。

 

世間の人は成功を目指して、

 ひたすら努力する。

 

そして、息切れする。

 

成功の少し前で、破綻する。

 

もし、最初に始めた時のように、

 最後の時も慎重にやれば、

 まず、失敗することはないんだ。

 

言いかえると、タオの人は

 いまのことを大事にするのであり、

 成功や財産や高い地位なんて

 まったく欲しがらない。

 

知識ばかり取りこもうとしないで、

 知識を超えた向こうのものを

 腹に収めようとする。

 

ということは、

 萬物の自然のあり方を知り、

 その成長と働きを助けること、

 そして、知識や欲望からの行為を

 できるだけ控えることだ。