しょうまん

小満


5月20日ごろ

万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る(暦便覧)


陽気がよくなり、草木などの生物が次第に生長して生い茂るという意味。

西日本でははしり梅雨が現れる頃。

 

立夏後の15日目、芒種の前日までの15日間である。

 天文学的には太陽が黄経60度の点を通過するときをいいます。

 

万物が次第に長じて天地に満ち始めるという意味から小満と言われています。
麦の穂が生長し、山野の草木は花を散らして実を結び、田に苗を植える準備を始め、蚕が眠りからさめて桑を食べ始め、紅花が咲きほこる季節です。

 

蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

初候 | 5月21日~5月25日ごろ

季節は初夏。

 

蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)とは、蚕が桑を盛んに食べ始めるころ。

 

なお、蚕起食桑は「略本暦」における呼び名。中国の七十二候では「苦菜秀」。意味は「苦菜(にがな)がよく茂る」です。

蚕(カイコ)は、ミツバチなどと並び、愛玩用以外の目的で飼育される世界的にも重要な昆虫。主に絹の採取にあります。
日本での歴史も古く古事記に記述があります。戦前まで絹は主要な輸出品でしたが、ナイロンが開発されてからは衰退。

蚕が作る繭は一本の糸からできています。絹を取るには、繭を丸ごと茹で、ほぐれてきた糸をより合わせます。茹でる前に羽化してしまった繭はタンパク質分解酵素の働きで絹の繊維が短く切断されているため紡績には向かないそうです。

紅花栄  (べにばな さかう)

次候 | 5月26日~5月30日ごろ

季節は初夏。

 

紅花栄(べにばなさかう)とは、紅花(べにばな)が咲き誇るころ。

 

なお、紅花栄は「略本暦」における呼び名。中国の七十二候では「靡草死苦菜秀」。意味は「薺(なずな)など田に生える草が枯れる」です。ベニバナ(紅花)は、キク科ベニバナ属の一年草または越年草。雅称を末摘花(すえつむはな)ともいいます。紅色染料や食用油の原料として栽培。

ベニバナは、エジプト原産といわれ、古くから世界各地で栽培されています。紀元前2500年、エジプトのミイラの着衣に紅花色素が認められます。

日本にはシルクロードを経て、推古天皇の時代(6世紀末から7世紀初め)に朝鮮半島を経て渡来したといわれ、近畿地方を中心に全国に広まって行きました。安土、桃山時代から江戸時代にかけて、京染めの藍茜、紫根と共に代表的な染料植物として用いられました。

麦秋至(むぎのときいたる)

末候 | 5月31日~6月4日ごろ

季節は初夏。

 

麦秋至(むぎのときいたる)とは、麦が熟し、麦にとっての収穫の「秋」であることから名づけられた季節。

 

雨が少なく、乾燥した季節ではあるが、すぐ梅雨が始まるので、二毛作の農家にとって麦秋は短い。

なお、紅花栄は「略本暦」における呼び名。

中国の七十二候では「小暑至」。意味は「ようやく暑さが加わり始める」です。大麦は世界最古の穀物の一つといわれ、およそ1万年ほど前から西アジアから中央アジア(現在のイラク付近)で栽培されていたといわれています。

また、古代エジプトのツタンカーメン王の墓(約三千年前)から、副葬品として納められた大麦が発見されています。

日本へは、小麦よりも早く、1,800年ほど前に中国から朝鮮半島を経て伝わったと考えられ、奈良時代には、日本各地で広く栽培されていました。お米と混ぜて「大麦ごはん」として食べられるようになったのは、平安時代からといわれています。

大麦は、ビールやウイスキーをはじめ日本では麦焼酎・麦茶、麦ごはん、味噌、水飴、大麦めん等に利用されています。